朋に生きる(上)「あなたらしさ」前提に|カナロコ|神奈川新聞ニュース

朋に生きる(上)「あなたらしさ」前提に

訪問の家の実践

 全国の障害者福祉関係者が視察に訪れる通所施設が横浜市栄区の住宅街にある。社会福祉法人訪問の家が運営する「朋(とも)」。利用者のほとんどが歩けず、はっきり言葉を話せない重症心身障害者。それでも本人の意思に沿った支援に先駆的に取り組み、30年間続けてきた。会話ができないのにどうやって「本人の意思」を尊重するというのだろう。

 私が最初に取材したのは10月30日、朋で開かれたお祭りだった。目当ては「みのりバンド」のパフォーマンスだ。

 サポートの学生などがSMAPの「世界に一つだけの花」をギターやキーボードで奏でる。10人ほどのメンバーが車いすや付き添う人の膝の上でマラカスを振り、体を揺らす。マイクを向けられたボーカルの宮下卓也さん(34)が口元をもごもごさせると、すかさず施設長の庄司七重さん(47)が声援を飛ばした。

 「リーダー、聞こえてるよ!」

 車いすを押されて舞台を後にする宮下さんに「よかったですね」と声が掛かった。

 私は混乱していた。これはいわゆるバンドではない。そもそも演奏し、歌っているという意識がどれだけあるのか。宮下さんが楽しんでいるのかすら、どう確認していいのか分からず、戸惑うしかなかった。

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