先祖が書いた草双紙を翻刻 相模原・荒井さん兄弟

 江戸の庶民が手にした本「草双紙」。浮世絵師による挿絵と独特の崩し字が一体となった、娯楽読み物だ。庶民文化の華ともいえる草双紙を、磯部村(現・相模原市南区)の農民荒井金次郎が3作も執筆、出版している。表紙を描いたのは、富嶽三十六景で知られる浮世絵師・葛飾北斎。ただの農民がどうやって文化の中心地に足跡を残したのか。その謎に挑んだのが、金次郎の子孫で、同区で総合印刷会社「日相印刷」を営む荒井徹さん(78)と功さん(75)の兄弟だ。

 

豪華メンバーで

 
 荒井金次郎のペンネームは仙客亭柏琳(せんかくていはくりん)。「花吹雪(はなふぶき)縁柵(えんのしがらみ)」「星下(ほしくだり)梅花咲(うめのはなざき)」「紫房紋(むらさきぶさもん)の文箱(ふみばこ)」の3作品を1830年代に相次いで出版した。

 校閲は当時の売れっ子作家・柳亭種彦が担当、絵師は歌川国芳、歌川貞秀。デビュー作「花吹雪-」の表紙は葛飾北斎が手掛け、相模川の名産アユが描かれた。

 相模原市史や神奈川県史でも柏琳は「草双紙の作者」と記されているが、これら豪華メンバーを擁して出版に至る経緯は「よほど有力な紹介者があったか」などと推測のみ。

 荒井徹さん、功さん兄弟は、半世紀前の出来事を振り返る。市史出版に先立つ1965年ごろ、父が市の関係者と思われる人の訪問を受け、柏琳の事跡をまとめようと作品の現物を探したが見つけることはできなかったという。以来、柏琳研究は荒井家の“宿題”となっていた。

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