時代の正体〈412〉国の破滅導く「愛国」の矛盾 山崎雅弘さんに聞く(下)|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈412〉国の破滅導く「愛国」の矛盾 山崎雅弘さんに聞く(下)

歴史と向き合う 

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2016/11/03 11:30 更新:2017/03/23 17:03
【時代の正体取材班=田崎 基】日清、日露戦争、第1次世界大戦、日中戦争、太平洋戦争と「五つの戦争」を見詰め直し、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さん(49)は思う。「かつてと酷似する構図がいまこの国にある」。そうした視点から見えるのは、主観に傾倒した権力者が暴走の果てにたどり着くであろう破局だ。私たちは立ち止まり、起きている出来事一つ一つに目を凝らす必要がある、と指摘する。

 歴史は点ではなく、線で流れを追う必要がある。南京大虐殺についていえば、大虐殺があったのか否かだけを問うと、焦点がぼやけてしまう。全て事は段階を踏み、起きるものだからだ。

 まず上海での戦いがあった。戦闘が長期化して日本側の損害も拡大し、訓練の行き届いていない部隊を送ることになった。司令部は中国軍を挟み撃ちにすれば決着がつくと考えたがうまくいかず、中国軍は北西の南京へ退却していった。

 司令部は上海戦しか想定せずに増兵し、補給まで考えていなかった。南京に退却する中国軍を追撃する必要が出た。そこで「食料は現地で調達しろ」と命じ、部隊は村で略奪を始めた。司令部が補給物資を送らないからそうなってしまった。

 村落の民家へ押し入り略奪を繰り返し、強姦(ごうかん)も行われた。当時の軍紀でも当然強姦は罪だった。発覚を恐れて女性を殺害し、足手まといになるために中国軍の捕虜を殺してしまうようなことも起きた。

 戦友を中国軍兵に殺された日本軍兵も相当数いただろう。さまざまな要素が重なり合い、兵士たちは精神的に相当すさんでいたと考えられる。

 だがその状況を甘くみた司令部は、首都・南京を攻略すれば戦争は終わると考え、南京制圧の先着を各部隊に競わせ始めた。部隊はすぐに進撃しなければいけない。だが物資はない。略奪はさらに繰り返された。

 そうした状況の中で南京での出来事が起きている。点ではなく線で流れをみる。主観ではなく客観的視点で歴史を見渡すことで、虐殺は起きるべくして起きたという側面が見えてくる。

 歴史を学ぶ意味とは、同じ過ちを繰り返さないためにある。そうであれば、南京大虐殺について「何万人を虐殺したか」というテーマ設定は、日中戦争や太平洋戦争全体を見渡したときに本質的な問題ではない、ということが分かる。そこに至る経緯や背景に目を向ければ、責任が追及されるべきはまず司令部であるという認識になる。


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