厚木基地の存在問う 映画「大和(カリフォルニア)」完成|カナロコ|神奈川新聞ニュース

厚木基地の存在問う 映画「大和(カリフォルニア)」完成

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2016/10/31 02:00 更新:2016/10/31 02:00
 在日米海軍厚木基地を抱える大和市が舞台の映画「大和(カリフォルニア)」が、完成した。背丈を超えるフェンスに囲まれ、有刺鉄線が巡る向こう側は、自国なのか。市内に住む宮崎大祐監督(36)の懐疑を、作中の主人公の葛藤に投影した長編ドラマだ。折しも、基地騒音訴訟は終局に差し掛かり、米軍機の移駐が迫る。市民として、直視すべき主題と向き合った。

 大和市の南西部、厚木基地は綾瀬市にまたがり、507ヘクタール、東京ドーム108個分の大地に広がる。「カリフォルニア州の特別区」。幼少に信じ込んだ風説は、なおも宮崎さんの耳奥に残っていた。その違和感を、ありのまま表題に据えた。

 物語は、ラッパーを目指す少女サクラ(韓(かん)英恵(はなえ)さん)と、米兵の娘レイ(遠藤新菜さん)との出会いから始まる。日米情緒が溶け込むまちは2人を急速に引き寄せるが、米国発祥のラップ音楽やレイに対するサクラの憧憬(しょうけい)が、やがて劣等感に変わる。基地周辺に生きる人々との触れ合いから、サクラは自我を見つめ直す。

 本編で貫かれた主題は、宮崎さん自身の葛藤にほかならない。「大和は大和国。つまり戦後日本のメタファー(暗喩)として描いた」と説く。日米地位協定の障壁が問われ続け、安全保障関連法による抑止力強化が進む。米軍が駐留する日本は主権国家といえるのか-。

 欧米にも問う。「オリエンタリズム(東洋趣味)を称賛しながら、西欧のコピーと軽んじてはいないか」。宮崎さんは4歳から8歳まで、シカゴで暮らした。日米を行き来するうち芽生えた、純粋なもどかしさだった。

 カナダ・モントリオールの映画祭に出品し、好評を得た。宮崎さんは「偽りのないリアルな大和」を投影したからと察する。軍用機の騒音は作中に欠かせなかった。最も激しい戦闘攻撃機FA18スーパーホーネットや電子戦機EA18Gグラウラーのほか、海洋攻撃ヘリコプターの飛行音を、周辺のあらゆる地点から録音した。サクラの繊細な心理を描写する音響に用いた。

 31日に東京都内で試写会が開かれ、来夏に国内で公開される予定だ。図らずも、住民が騒音解消を求める第4次訴訟の上告審や、米艦載機部隊の岩国基地(山口県)移駐の時期と符合した。「厚木基地の存在を問い直す好機」と宮崎さんは期待する。

 「DEEP END PICTURES」(大和市福田)が製作した。本編119分。11月にエストニアとシンガポールの映画祭でも上映される。

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