時代の正体〈398〉障害者殺傷事件考(上)特異な事件ではない

藤井克徳・日本障害者協議会代表

 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が刺殺され、27人が重軽傷を負った事件から2カ月余りたった28日、事件をどう捉え、何を教訓とすべきかを考える討論会が参院議員会館で開かれた。登壇した障害者、家族、支援者、有識者ら発言から戦後最悪レベルの事件と向き合う視点を考えたい。初回は自身も視覚障害者である、日本障害者協議会の藤井克徳代表のスピーチを紹介する。

 事件後、全国の仲間から「怖い」という声が届く。それは三つの怖さだ。まず手口があまりに残忍。辞めていたとはいえ、自分たちを最も守ってくれる職員が容疑者だったということ。そして容疑者が犯行前に衆院議長に宛てた手紙だ。重度障害者は生きていても仕方がない、安楽死させた方がよいと主張している。この三つ目の怖さにより、すべての障害者は自分に刃を向けられている感覚を持つことになった。

 この手紙は優生思想、あるいは優越的な感覚に基づく視点で書かれている。私にはナチス・ドイツによる障害者抹殺政策「T4作戦」が重なった。

 今回の事件は極めて特殊で異常な事件だが、それだけでは片付けられない。特殊性は捜査機関や法廷で心理学や精神医学も動員して真相が究明されるだろう。特殊だというだけで片付けられない問題は社会の側から考えなければならない。優生思想に基づき事件が起こされたのならその温床、遠因、背景は現代社会に潜んでいる。生産性や経済性、効率、速さが人を図る尺度になっており、容疑者もそうした社会に生きてきた以上、影響はあったと思う。単独犯ではあるが、強大な共犯者に後押しされた単独犯という言い方もできる。
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