時代の正体〈366〉多様性抑圧に危機感 教科書パネル展問題

 横浜市戸塚区の戸塚図書館前ロビーで6月中旬に行われた「よくわかる教科書パネル展」を巡り、横浜市議が「特定の教科書への批判だ」と指摘し、市が対応を検討している問題。教科書展を主催した市民は「多種多様な表現があっていいはず」と違和感を吐露する。教科書問題に詳しい専門家は「(パネル展は)全く問題ない。むしろ政治家が介入していることに大きな問題がある」と話している。

 パネル展は、「教科書問題を考える戸塚区民の会」と「教科書パネル展実行委員会」が共催。育鵬社の採択率が全国で約6%と低いことなどの客観的な情報に加え、「国民主権を実現する2つの方法」「男女平等」「自衛隊の海外派遣と憲法9条」など六つのテーマを設け、各教科書の該当箇所の記述に下線を引き、比較検討、育鵬社の教科書の問題点を解説していた。

 来場者には「子どもたちがどのような教科書で学んでいるのか他社の教科書の比較とともにご覧いただければと思います」と投げ掛けていた。

 主催者は「ことさら育鵬社の教科書を批判するというより、現在使われている教科書の内容をまずは知ってもらうことが狙いだった」と説明している。
 

規定


 これに対し「市が特定の政治的主張に対し、便宜供与しているという誤解を一般市民に与えかねない」と指摘するのは、横浜市会の横山正人市議(自民党)だ。同市議は、国内最大の右派組織「日本会議」の地方議員連盟で副会長を務めている。

 同市議はツイッターで7月6日深夜、教科書展の開催を問題視する産経新聞のインターネット上の記事を引用した上で、展示は特定の教科書を批判する政治活動だと断じ、「多くの利用者が通行する図書館の入り口ホールを認めることは許されない」などと書き込んだ。

 会場は、区民センターや図書館などが複合的に入る施設の1階ロビーの一部。所管する戸塚区地域振興課によると、ロビーを使えるのは登録済みの団体で、日頃の活動成果を展示する場所として希望があれば無料提供しているという。利用規定を定めた「地域センターの運営にあたって」によると、団体登録には活動内容の制限はなく、施設利用の際、物販など「営利のみを目的として利用するとき」は使用できないとだけ定めている。さらに「政治活動の場合でも公職選挙法による制限を除き一般利用と同様に扱う」と規定、宗教活動でも利用に制限はないと明記している。

 主催の「教科書問題を考える戸塚区民の会」は2012年11月20日に団体登録し、教科書問題について同センターで勉強会などを開いてきた。パネル展は今回が3回目で、区の地域振興課は「これまで通りの手続きで、通常の使い方だった」としている。

 横山市議は神奈川新聞社の取材に対し、「言いたいのは、展示内容のことではない」と再三、念押しした上で、「地区センターという公の場所を、政治を論じる場所にしていいのか、という問題だ」と主張。「それを良しとするのであれば、例えば自民党が憲法改正草案を展示したり、幸福の科学が出版書籍を紹介することも許されることになる。あの場所がそうした状況になっていいのか」と話す。

 さらに、庁舎管理の問題について「市は思考停止に陥ってはいけない。区庁舎や市庁舎の中でやってはいけないことがあるはずだ。これまでも写真展や花の展示が行われてきた。そうしたイベントはこれまで通り許されるべき。何でもかんでも平等に許されるという発想こそが今の『時代の正体』なんだ」と語気を強めた。

 表現の自由に関しては「仮にあのロビーで教科書展ができなくなったとしても、地区センターの会議室でも、講堂でもいくらでも許される。表現の自由は全く問題ない。あくまでこれは庁舎管理の問題」と説明。具体策について「市が考えるべき」と訴えた。
 

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