感触伝える技術で次世代ロボ KASTが医療分野などで開発へ|カナロコ|神奈川新聞ニュース

感触伝える技術で次世代ロボ KASTが医療分野などで開発へ

力触覚を実装したロボットのアームで風船をつかむ大西教授(右から2人目)。右端は下野准教授=川崎市幸区の慶大・新川崎タウンキャンパス

 「柔らかさ」がわかるロボットで、医療・福祉現場に革新を-。神奈川科学技術アカデミー(KAST、川崎市高津区)が、次世代の医療・福祉介護ロボットの研究に取り組み始めた。人間らしい優しく柔らかな動作を可能とする「力触覚(りきしょっかく)」という特許技術を応用し、医療や手術、リハビリ、生活などを支援するロボットを開発する試みだ。特区活用による支援を受けながら県内の企業、大学、医療機関などが一体となり、4年後の実用化を目指す。

 ロボットのアームが風船をつかむ。すると別室から遠隔操作をする人の手元にその柔らかさ、反動が伝わる。強く握り、風船が割れれば、その感触さえも。

 「これが『力触覚』という技術。今までのロボットはこの柔らかさを感じることができなかった。視覚や聴覚に続く新しい感覚技術で、実現は不可能とも言われていた」。プロジェクトの研究顧問を務める大西公平・慶応大理工学部教授は鮮明な力触覚技術の開発に世界で初めて成功し、特許を取得。今回のプロジェクトの根幹をなす原理だ。

 この原理の応用、実装で想定するのは、医療デバイス、手術支援、リハビリ支援、生活支援ロボットの4分野だ。

 例えば現在、遠隔で血管や臓器を縫う医療機器は基本的に目視が頼みの綱だが、力触覚を実装すれば臓器に針が刺さる感覚、糸が通っていく感覚が操作する手元に伝わる。感覚は増幅させることも可能で、「2ミリのミジンコが暴れる感触だって感じることができる」と大西教授。人間の限界を超えた感覚を現象化することで、より繊細で安全な手術も実現できる。

 すでに義手の開発が進んでいるほか、まひや機能不全が残る患者のリハビリ支援、介護現場における歩行や立ち上がり、着座の支援など、より人間らしい優しい介助ができるロボットの開発に取り組んでいく。

 力触覚の装置は動作や数値を記録・再現することもでき、優れた医師の手術を再現して実習に生かせる。リハビリに励む患者の筋肉の動きを数値化することで、質の高い訓練につなげられる。

 計画の集大成としては、力触覚を実装した内視鏡下手術支援ロボットの原型づくりを目指す。プロジェクトリーダーの下野誠通・横浜国大工学研究院准教授は、「現在最も普及している『ダヴィンチ』を超える精度と安全性を備えた手術支援ロボットの実用化につなげたい」と意気込む。

 プロジェクトは「京浜臨海部イノベーション国際戦略総合特区」と「さがみロボット産業特区」を活用。県内の大学や研究機関をはじめ企業、医療・福祉現場も参加し、年8千万円の予算規模で4年計画で進む。

 下野准教授は、「神奈川には国内最高峰の知的資源や産業技術がある。地域連携や産官学連携をベースに、神奈川から生まれた技術を世界に発信し、医療・福祉の現場を良くするとともに、産業活性化にもつなげていきたい」と話した。

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