時代の正体〈331〉憲法学者・石川健治さん特別講座⑤ 緊急事態条項|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈331〉憲法学者・石川健治さん特別講座⑤ 緊急事態条項

9条が立憲主義の原動力

 憲法学者・石川健治さん(54)の〝特別講座〟は最終回。話題は立憲主義へと及んだ。石川さんは言う。「憲法9条なしには、日本の立憲主義は成り立たなかった」
 
-9条改正という動機からは、安倍晋三首相の並々ならぬ執念を感じます。 

 確かに、日本国憲法の制定過程には問題がなかったわけではありません。連合国軍総司令部(GHQ)が関与するきっかけを、日本側の主だった憲法学者の参加していた松本委員会が作ってしまった。日本の憲法学には、そこに負い目があるわけです。最低限の改正作業で足りると考えた状況認識が甘かった。それでGHQの関与を招いてしまった、という責任はある。そして、「米国人に手を突っ込まれて悔しかった」という感情は、憲法学者たちも含めて、当時を生きた人にはあったのが当然です。その中で9条をその象徴だと受け止めた人々の物語を、安倍さんは無反省に受け容れておられる。

 しかし、それらはナショナリズムから来る感情の発露であり、立憲主義それ自体とは関係のないことです。憲法を誰が作ったか(憲法制定権力)にこだわる考え方も、憲法にナショナルなエネルギーを調達するためのレトリックであって、立憲主義の標準装備といえるかどうかは疑問です。

 むしろ、日本国憲法の生い立ちの故にナショナリズムに依存できないにもかかわらず、あるいは「だからこそ」だったのかもしれませんが、ともかくも日本の立憲主義がそれなりにパワフルに実現されたのは、どういうメカニズムによるものだったか。それをもっと真剣に考えるべきだと思います。

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