カヤック記者が行く 手痛い洗礼で学ぶ|カナロコ|神奈川新聞ニュース

カヤック記者が行く 手痛い洗礼で学ぶ

「海遍路」編

側面が潮まみれで腐食が進んでいる記者のパソコンとハードディスク

 向かい風が吹いていた。海洋冒険家の八幡暁さん(41)=逗子市=は沖を見詰め言った。「ちょっと風が強いね。最悪6時間くらいかかる」。小田原市から県内全沿岸をカヤックで約10日間かけて巡る実地調査「海遍路・神奈川」の同行取材が19日、始まった。

 沖へ出ると、断続的に猛烈な向かい風が吹き付けた。風波が立ちカヤックの先端が沈み込む。はね上がったしぶきを頭からもろにかぶり、全身ずぶぬれだ。状況は確実に「最悪」になっていた。

 小田原市の早川河口からこの日のゴール、大磯町までは約20キロ。6時間こぎ続け、心身ともに冷え切り、腕も上がらぬほど疲れ果て、なんとか大磯漁港にたどり着いた。土砂降りの雨のように海水を浴びたせいでカヤックの中も水浸しだ。ぷかぷかと、会社貸与のパソコンを入れた防水袋が浮いている。まずい。

 恐る恐る開けてみる。湿っている。パソコンの電源ケーブルを差す穴に粘り気のあるサビが浮き出ていた。確実にまずい。

 海水は通電するためうかつに電源を入れれば、撮りためた写真や原稿がすべて吹き飛ぶ可能性もある。翌日、航程を抜け出し本社へ急いだ。データだけでも取り出せないか。わが社が誇るシステムエンジニアが慎重にハードディスクを取り出す。潮まみれだ。

 専用のケーブルで別のパソコンへ直結。するとシュルシュルと、なんとも心細い音を立てて動きだしたではないか。データだけは救い出せそうだ。肩の力が一気に抜けた。

 海遍路の旅に戻り、八幡さんに聞いてみた。「パソコンはどうやって持ち運んでいるんですか」

 「生鮮食品を保管する密閉式のビニール袋に入れて、さらに服で包み防水袋に入れている」。八幡さん、そういうテクニックは早めに教えてください。

 「これで一つ覚えたね」と、日焼け顔が笑った。

 それにしてもパソコンを1台壊してしまった。わが上司、イガグリ部長の苦言が頭をよぎる。旅の序盤の手痛い洗礼だった。

 ※当欄を担当する記者が「カヤック記者」として県内の水辺を訪れ、海抜ゼロメートルからの視点で神奈川の景色、街や人の魅力を紹介していきます。

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