苦難の経験糧に前へ 福島の中学生 神大進学|カナロコ|神奈川新聞ニュース

苦難の経験糧に前へ 福島の中学生 神大進学

忘れまい

神奈川大の2年生になった田村章悟さん

 福島の中学生は苦しい状況でも笑顔を絶やさず、教師や保護者はその背中を精いっぱい支えていた。

 東日本大震災7カ月後から約1年間、福島県広野町立広野中学校を継続取材した。学校近くの旅館やホテルに宿泊し、私を含む3人の記者が定期的に学校に通い続けた。

 東京電力福島第1原発から約20~30キロの位置にある広野町は事故後、緊急時避難準備地域に指定されていた。住民のほとんどが町外へ避難。当時、役場は隣のいわき市に移転し、広野中も役場近くの中学校の一部を間借りしていた。

 約230人いた生徒は全国に散らばり、戻ってきていたのは23人だけ。教室で明るく振る舞う生徒は仮設住宅で暮らしていた。部屋には学習机も本棚もない。父親が仕事を失い、家族が離れて暮らす経験をした生徒もいた。

 心に残ったのは、3年の田村章悟さんから聞いた「震災がなかったらよかったと、もう思わない」という言葉。苦しい状況でも、前向きに生きようとする姿は大人びていた。

 田村さんはその後、神奈川大学(横浜市神奈川区)に進学し、今春2年生になった。大学を訪ねると、笑顔でこう語った。

 「震災という大きな困難があったからこそ、成長できた。家族や友人、学校の先生、多くの人に支えられたことに感謝したい。どんな困難も乗り越えられる、という心の強さが身に付いた」

 決して良い思い出ではないはずの震災をも糧に歩み続ける姿勢はまぶしく見えた。

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