湘南でビーチマネー浸透中 海岸のガラス片を地域通貨に|カナロコ|神奈川新聞ニュース

湘南でビーチマネー浸透中 海岸のガラス片を地域通貨に

海岸で拾ったごみのガラス片が地域通貨として使える「麦波ベーカリー」=藤沢市辻堂東海岸

 砂浜のごみに交ざっているガラス片(ビーチグラス)を湘南の地域通貨として活用する「ビーチマネー」の輪がじわりと広がっている。2007年春に42店の協力で産声を上げ、倍以上の90店まで成長。全国各地で地域通貨は導入されているが、多くは広がりに欠けているという。そんな中、「宝探し」を楽しみながら砂浜の美化に貢献し、経済的にちょっぴり得するビーチマネーのユニークな発想はエコな人々を引きつけているようだ。
 
 辻堂駅から海岸に延びる通称「サーファー通り」。おしゃれな飲食店などが並ぶ界隈(かいわい)は、いわば、ビーチマネーのメッカだ。協力店は「海岸清掃のご褒美」として、割引などさまざまなサービスを提供している。
 
 「どんな色でも1個30円分、1回で使えるのは2個までですよ」。国産素材のパン作りにこだわる「麦波ベーカリー」のオーナー青木智和さん(45)が、店独自のルールを説明する。近所の主婦米長秀子さん(66)は「ビーチグラスはきれいだから普段は子どもたちにあげるけど、今日は使ってみた。会話のきっかけにもなって知り合いが増えた」と話す。今や海岸清掃は日課だという。

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 仕掛け人は、辻堂で環境保護活動を続ける堀直也さん(33)だ。サーファーの堀さんは、砂浜や岩場に流れ着くごみの清掃を続けてきた。「どうすれば多くの人に足元を見てもらえるだろうか」。考えた末、地域通貨に行き着いた。

 賛同してくれる店主を口説いて回った。その後、湘南を中心に広がり、定着しつつある。青木さんは「商売をする以上はごみが出る。少しでも環境に貢献できると思った。遊び心もあって、ノリでできる」。

 さらに7月からは新しいプロジェクトが動きだした。南米チリ産のワインを輸入販売するアンデス・アジア社(東京都港区)が協力を申し出た。ビーチグラスは飾りやアクセサリーとしても楽しめるが、使われた通貨は各店にたまりがちだ。そこに「出口」を開ける計画で、同社のワインの空ボトル1本分(420グラム)のビーチグラスを新品ワインと交換する。同社は「エコ活動に参加する企画を探していたが、これはぴったり。ボトル片を回収してくれる人たちに感謝したかった」と言う。

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 事情に詳しい東洋大非常勤講師の西田亮介さん(27)によると、地域通貨は全国300~600カ所で導入されている。しかし、多くは商工会議所などが音頭を取るトップダウン型で十分に普及していない。一方、ビーチマネーは海岸清掃の手段として始まった現場発のボトムアップ型。店もサービスを自由に設定でき、負担が重すぎず続きやすいという。

 「何よりも住民や店とのコミュニケーションのきっかけになっていて、湘南独特の開放的な風土になじんだ。貴重な成功例」と注目する。発案者の堀さんは夢見ている。「国内だけでなく世界の海にも広がれば、いずれビーチグラスがなくなる。それが一番きれいな終わり方ですよね」

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