時代の正体〈275〉チマ・チョゴリ(下) 「共に生きる」の悲痛

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2016/03/21 11:14 更新:2016/03/22 00:09
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葛藤


 チマ・チョゴリ姿の2人に重なる、ある意識調査の結果がこのほどまとまった。

 龍谷大人権問題研究委員会が昨年6月から8月にかけ在日朝鮮人の生徒らを対象に行ったアンケート。全国の朝鮮学校高級部や民族学校の高校生、大阪府内の公立学校に通う外国にルーツを持つ生徒に、ヘイトスピーチデモや街宣に抱く感情を聞いた。

 1483人に回答を得て、うち1453人は朝鮮半島にルーツを持つ子どもたち。回答者の93・0%を占める朝鮮学校生1379人の回答を見てみる。

 「生活していて差別を感じる」が82・9%を占め、ヘイトデモや街宣に77・2%が「怒り」を、47・3%が「恐怖」を感じていた(複数回答)。怒りや恐怖の理由について73・5%が「人間として平等に扱われていない」を挙げた。

 研究委員会のメンバーでジャーナリストの中村一成(イルソン)さんは、ヘイトデモ・街宣参加者をどう思うかという質問への回答に着目する。

 「許せないけど、同じ社会に生きる人間だからいつか分かり合える」が39・6%、「許せない、絶対に理解し合えない」が38・7%、「無視する・放っておくべき」が16・8%、無回答4・9%だった。

 「いつか分かり合える」「理解し合えない」がほぼ同じ割合。そして、この相反する回答を同時にしていた生徒が数人いたという。中村さんはうなる。

 「個々の内面の葛藤がここに表れている。絶望、諦めというところへ落ち込まないよう、綱渡りをしているイメージが湧く」

 「分かり合える」ためには、差別がなくなるという社会の変化が前提になる。その趨勢(すうせい)を握るのはマジョリティーだ。出て行け、朝鮮へ帰れと言われても、この社会で生きていくしかない。在日コリアンがいつか多数者になることもない。そうであるなら、多数者の側の可変性に懸けるしかない。

 「『分かり合える』という回答の多さは、能天気なのでも、けなげなのでもなく、前向きというのとも違う。ヘイトスピーチによって失った社会への信頼感覚を回復したい、生きるための前提を確立したいという切実な思い、追い詰められた痛みをみるべきだ」

 中村さんがこの結果に重ね合わせるのは、差別街宣にさらされた京都朝鮮第一初級学校襲撃事件の取材で出会った在日の保護者たちの姿。反省なき加害者の暴言を浴びながら、裁判の傍聴を続ける理由を尋ねると、言った。

 「悔い改めるのを見たい。どこか同じ人間として通じる部分を見つけたい」

 ここにも透ける、そうでなければ生きられないという痛切な願望。アンケートでは、共生社会を創るために何がしたいかを問うた自由記述で、差別主義者を物理的に排除するといった回答をしたのは5人だけだったという。中村さんは言う。「そもそも少数者にそんなことはできないからだ」...

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