漱石の心情感じて 安らぎ求めた書 没後100年で初公開|カナロコ|神奈川新聞ニュース

漱石の心情感じて 安らぎ求めた書 没後100年で初公開

初公開される漱石愛用の書「無絃琴」(県立神奈川近代文学館提供)

 今年没後100年を迎える文豪・夏目漱石が都内の自宅「漱石山房(さんぼう)」に掲げた書「無絃琴(むげんきん)」が今月、県立神奈川近代文学館(横浜市中区山手町)で初公開される。書を保管していた県内の遺族が初めて同館に貸し出し、展示が実現した。同館は「晩年の漱石が心の安らぎを求めた象徴。山房内にあった絵画や、遺品の文具とともに並ぶ姿を見てほしい」としている。

 書は縦41センチ、横幅84センチで、僧侶良寛(りょうかん)、寂厳(じゃくごん)と並び、名筆として知られる松山市円光寺の明月(めいげつ)和尚(1727~97年)の作。「無絃琴」は唐の詩人陶淵明(とうえんめい)が酔って弦のない琴に触れ、心で音を楽しんだ逸話に由来するという。

 漱石は俗世を超えた境地を意味するこの言葉を気に入り、「こころ」執筆中の1914(大正3)年7月下旬に書を入手、晩年にかけて山房の客間に飾っていた。代表作「吾輩は猫である」「草枕」で、「無絃の素琴(そきん)を弾じ」、「無絃の琴(きん)を霊台に聴く」などの表現を記している。

 芥川龍之介が漱石没後の20年1月に発表した「漱石山房の秋」では、東京都新宿区早稲田南町の漱石山房を訪れ、愛用していた紫檀(したん)の机、安井曾太郎(そうたろう)の油絵とともに「無絃琴」の額に見入り、漱石をしのぶ心情が描かれている。

 学芸員の野見山陽子さんは「晩年の漱石は『こころ』で近代人の人間関係のエゴイズムを描きながらも書斎にこの書を飾り、心の安らぎを求めた。漱石が持っていた二つの世界を感じてほしい」と話している。

 書は同館が26日~5月22日に開く特別展「100年目に出会う 夏目漱石」(神奈川新聞社後援)で、山房に飾っていた絵画や館所蔵の文具、東日本大震災後に宮城県内の被災地で再確認された短編小説「文鳥」の原稿などとともに展示する。問い合わせは、同館電話045(622)6666。

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