時代の正体〈269〉キャスターたちの会見(下) 「組織の枠超え連帯を」

 テレビ局に「停波」を命じる可能性を示した高市早苗総務相発言に抗議する声明をキャスターらが発表した。会見の席上、危機感を表明したそれぞれの発言と、報道現場から届けられた声を紹介する。

◆青木理さん・ジャーナリスト
 メディアの原理原則やジャーナリズムの矜持(きょうじ)に関わる事件が起きたときは、組織の枠を超えて連帯し、声を上げないといけないと思ってきた。政権やその応援団によるメディアへの不当な攻撃に、黙っておけない。このまま押し込まれればメディア、ジャーナリズムの原則が根腐れしかねない。

◆大谷昭宏さん・ジャーナリスト
 視聴者にはすでに多大な影響が出ているのではないか。被災地で取材し、復興が進んでいると報道する。実際進んでいるところもある。だが、復興は進んでないのにそう報道をさせられている、福島の除染は進んでいると報道させられているのだろうという意識が被災者の中に広がっている。阪神大震災のときにはなかったことだ。そこまで政権の手先になっていると思われている。国民全体にとって不幸なことだ。

◆金平茂紀さん 「報道特集」(TBS系)キャスター
 「報道の自由度ランキング」で日本は180カ国中、61位。恥ずべき事態だが、この息苦しさの原因は外からの攻撃によってではなく、ジャーナリストの内側に生まれてきているのではないかという思いがある。自主規制、忖度(そんたく)、過剰な同調圧力、それにより生じる萎縮がいまほど蔓延(まんえん)している時代はないと感じる。核実験成功を伝える北朝鮮の国営放送を私たちは半ば嘲笑しながら流しているが、自分たちの放送が異論反論を許さない、多様性のない、批判精神のないものにならない保障はない。

岸井成格さん 「ニュース23」(TBS系)アンカー
 視聴者に言いたいのは、公平・公正という言葉にだまされてはいけないということ。政治的公平・公正とはまったく違う。判断するのは国民であり、そのためにメディアが事実を伝え、チェックをする。メディアが公平・公正かは放送倫理・番組向上機構(BPO)が判断する。権力が判断することは絶対やってはいけないことだ。

◆田原総一朗さん 「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)司会者
 高市発言に全テレビ局、全番組が集まって抗議すべきだ。残念ながら多くのテレビ局の多くの番組は放送もしない。何となく受け止めている。政府側は図に乗り、テレビ局は萎縮していく。この春、軌を一にして骨のある3人のキャスターが番組を降板する。偶然かもしれないが、萎縮したという構図になりかねない。高市発言には断固抗議しないといけない。

◆鳥越俊太郎さん・ジャーナリスト
 高市発言はいつでも停波させられるぞ、変なことするなよという安倍政権による恫喝(どうかつ)だ。メディア、国民をなめ切り、おごり高ぶった安倍政権の態度が背後にある。国民に代わって権力をチェックする使命がメディアにはある。だが安倍政権になってから、政権をチェックするはずのメディアが逆に政権によってチェックされている。官邸はテレビ番組、報道番組をチェックし、対するメディアには自粛や忖度、遠慮がはびこっている。政権はやりたい放題で、この国は大変なことになる。戦前のようになるかもしれないし、全権委任法を得たナチスのようになるかもしれない。

◆田勢康弘さん・ジャーナリスト
 本会議場で誰が拍手をしなかったかを安倍首相がチェックしていると複数の自民党議員から聞いた。物が言えないから自民党議員が、民主党議員にどうしてあそこで寸止めするんだ、もう一太刀切り込めと発破をかけているという話も聞いた。メディアの社長が総理と会食しているために書く内容を自己規制している現場の記者たちと同じだな、と自民党議員たちと笑い合った。ジャーナリズムは死にかけている。何より恐ろしいのは権力の意向をメディアが忖度し、追従することだ。電波を止める発言など、それに比べれば他愛のないことだ。 (欠席のため代読)

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