時代の正体〈262〉日本会議を追う(4) 望む考えネットで補強 |カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈262〉日本会議を追う(4) 望む考えネットで補強

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  • 公開:2016/02/19 07:00 更新:2017/03/17 16:22
 頑張ろう三唱の熱狂で幕を閉じた2015年11月10日の「今こそ憲法改正を!1万人大会」。日本武道館を出ると冷たい雨が落ちていた。人々は何を求めて集会に足を運んだのか。スマートフォンを無心でいじっている女性に声を掛ける。46歳、独身。大ぶりのつけまつげが印象的だった。

 「私は心配なの。この前、外国語学校の壁に大学合格者の一覧が張り出されていたのを見た。皆、中国人や台湾人。日本のエリート大学にその年だけでざっと500人も合格している」

 何が言いたいのだろう。その心配が憲法改正とどうつながるのかも見えない。女性は締め付けられた足先が痛むのか、高いヒールの靴で足踏みを繰り返す。
 「いろんな補助金をもらって勉強した中国人がこんなにエリート大学に入学したら、日本人が入学できない。フェアじゃない」

 補助金とは何のことだろう。聞けば、ある政治家が何億円も出し、外国人留学生を支援しているのだという。

 「ネットにそう書かれていた。日本の大学生は奨学金という借金を背負わされ、卒業したときには何百万円も返さなきゃいけない。不公平」

 中国人が失業保険や生活保護を不正受給し、豊かな生活をしているという不満も口にした。だが、日本人も不正受給をしているし、数を比較すれば日本人の方が圧倒的に多いはずだ。それでも女性は区役所の窓口に行けば中国人がたくさんいると主張する。そもそもどうやって中国人だと見分けているのかと尋ねると「そんなのは見れば分かる」。一方的に募らせた被害者意識が目を曇らせてはいまいか。

 女性は高校を卒業後、英国へ語学留学し、現地の韓国人留学生のグループからいじめられたのだという。「韓国人の方が人数が多く、みんなで寄ってたかって私の悪口を言った」。その記憶からくる韓国人への嫌悪がどうしてか、中国人にも向けられるようになっていったらしい。

虚実ない交ぜ


 「日本に来ても、彼らはわが物顔。ほら、これを見て」

 スマートフォンの画面には、ショッピングモールに置かれたソファで小太りな男性が寝ている写真が映しだされていた。

 「これ中国人。店の人もあきれていた。日本人は海外に行ったとき、こういうことはしない」

 そうとも言い切れない気がするが、黙っていると女性は続けた。

 「こんなことをほかの人に言ったらレイシスト(差別主義者)と思われる。分かっている。でも不安なの。銀座に行けばものすごい数の中国人や韓国人が歩いている。このままじゃ日本はおかしくなる。支配される。そう思わない? 私がおかしいのか」

 虚実ない交ぜのインターネット上の言説をうのみにし、考えを組み立て、その主張を補強する出所不明の情報をまたネットで検索する。目に触れるのは自分の考えに沿った情報だけ。そこに多様性はなく、視野はさらに狭まっていく。

 1万人大会はネットで開催を知り、1人で足を運んだという。

 居心地はよかっただろうか。

 吹き付ける霧雨をよそに女性は「私の話を聞いてよ」と繰り返し、話し続けた。右目のつけまつげが次第にはがれ、いまにも落ちそうになっていた。なぜ憲法改正を望むのか、はっきりした答えは最後まで聞けなかった。 

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