時代の正体〈260〉日本会議を追う(2) 国民投票への「名簿」

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2016/02/17 02:00 更新:2016/02/17 16:14
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 鳥居をくぐり、石段を上る。横浜市港北区の師岡熊野神社。本殿のさい銭箱の端に、その用紙は平積みされていた。

 〈1000万賛同者拡大で、美しい日本の憲法をつくりましょう〉
 ジャーナリストの桜井よしこさんらを講師に招き、2月20日に関内ホールで開催される「今こそ憲法改正を! 神奈川県民大集会」の告知ビラだが、末尾に氏名、住所、電話番号、所属団体を記入する欄が設けられている。

 保守系組織「日本会議」の主導で設立された「美しい日本の憲法をつくる国民の会」による署名集めに連動したもので、県民大集会の主催は「憲法改正を実現する神奈川県民の会」とある。インターネット上では「初詣客を狙って各地の神社で日本会議が署名集めを行っている」と批判的な声が上がったが、日本会議の活動を県民の会などの地域の団体が多層的に下支えしていることがうかがえる。

 宮司の石川正人さん(63)によると、神社での署名活動は日本会議や国民の会などの呼び掛けで2015年4月ごろから始まったという。「集まりが芳しくないということで昨年10月、県内の神社に私から再度呼び掛けはしたが」。師岡熊野神社では500~600人分の署名が集まったという。

誇 り


 石川さんは神道政治連盟神奈川県本部の本部長も務める。日本会議の前身の一つは宗教右派を集めた「日本を守る会」ではあるが、そもそもなぜ憲法改正に賛成なのだろう。

 「私たちはこのままではまずいと思ってきた。国際社会において日本がどうあるべきか。日本に誇れる未来はあるか。いまの憲法が時代に合っているか。日本の伝統や文化を誰が未来に伝えていくのか、と」

 神政連のホームページでは、主な取り組みとして「世界に誇る皇室と日本の文化伝統を大切にする社会づくり」に続き、「日本の歴史と国柄を踏まえた、誇りの持てる新憲法の制定」を目指すとしている。

 石川さんの父は千島列島の松輪島で終戦を迎え、シベリアへ抑留されたという。「父からは強制労働の話をよく聞かされた。その最中にけがをしたことでC型肝炎に感染し、私が大学を出て間もないときに亡くなった。二度と戦争を繰り返さず、子どもたちを戦地へ送らないためにどうするか。日本に手を出したら大変なことになるという状況をつくらなければいけない」。そのために憲法改正が必要なのだと力説する。

動 員

 
 一方、県西部の神社の宮司は打ち明ける。「署名集めなど、普通の参拝客からしたら神社が変なことをしていると思われる」

 奥まった社務所の窓口の片隅に署名用紙が重ねられていた。用紙には署名者だけでなく「ご賛同者」として5人分の氏名、住所、電話番号を書く欄がある。日本会議の動向を追い続ける「子どもと教科書全国ネット21」事務局長の俵義文さんは「電話番号まで書かせるのは、いざ国民投票となった場合の電話を掛ける名簿にするためだろう。具体的に先を見据えた取り組みだ」と指摘する。

 そうしたまなざしをよそに、石川さんが高揚した調子でアジテーションしたのは2015年10月31日、横浜市開港記念会館で開かれた県民の会の結成1周年記念大会だった。

 「私たちの目標は1千万人署名だ。各都道府県に割り振ると神奈川県の目標は40万筆。いまのところ達成率は71・9%だ。28万以上の賛同を得た。もう一息だ。この目標を全国一番で達成しようではないか」

 会場には参加を呼び掛けた氏子も顔をそろえていた。

 「次は地方議会での憲法改正賛同決議だ。県内34議会のうち18議会が残っている。大きなところでは川崎、相模原市。もう一歩だ」「憲法改正実現のため、来年の参院選、自民党だけでなく憲法改正に賛同してもらえる国会議員を3分の2以上つくることだ。国民投票になれば必ず勝つことができると確信をしている」

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