時代の正体〈258〉緊急事態条項は「独裁許す全権委任」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈258〉緊急事態条項は「独裁許す全権委任」

憲法学者・長谷部恭男さん 「緊急事態条項」に危機感


目 標

 ドイツにカール・シュミットという学者がいました。彼は緊急事態に対応して国家機関に権限を集中することを「委任独裁」という言葉で説明しました。委任独裁では、問題が解決されれば、元の立憲主義的な政治体制に戻っていくと考えます。一方、憲法制定勢力という主権者が現れ、憲法を破壊し、既存の政治体制を飲み込んでしまうことを「主権独裁」と定義しました。

 当初シュミットは委任独裁と主権独裁は異なると主張しましたが、そのうち区別をしなくなります。両者の距離は限りなく近いことに、気付いたからだと理解できます。委任独裁で始まった権限の集中が、主権独裁に至る危険性はとても強いものです。

 自民党の改憲草案には緊急事態の定めがあります。政府の決定で憲法まで変えられるとは書いてありませんが、実際発動されれば、緊急事態に対応するために作られ、ナチスの独裁を許したドイツの授権法(全権委任法)と変わりのない運用がされる恐れがあります。

 安倍政権の最終目標は自民党の改憲草案の実現です。「個人を尊重し、多種多様な生き方を認め、生き方はそれぞれの個人が選び取るものだ」という日本国憲法の根本を否定しようとしている。改憲草案の前文には、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守ると記載されている。政府が国民の中に気概を育ててあげるから、ついてきなさいと言い、単一の生き方へ国民を誘導しようとしています。

 安倍首相は人権、法の支配、民主主義は普遍的な価値であると言っているが、本音と異なるリップサービス。だまされてはいけない。

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