時代の正体〈255〉ヘイトスピーチ考③ 差別はね返す日常風景

桜本封鎖(3)

 身をていした座り込みによって直撃こそ回避されたが、差別デモの一団は街まであと100メートルもないところまで迫り、在日コリアン3世、崔(チェ)江以子(カンイジャ)(42)のショックは小さくなかった。「まさか、いつも買い物で通る道を泣きながら走るなんて」

 在日の街として川崎・桜本は象徴的に語られるが、臨海部の一帯でヘイトスピーチの打撃と無縁でいられる場所などない。

 翌2月1日、崔は子どもたちに頭を下げた。差別主義者が押しかけてくると知り、横断幕を一緒につくった。その真っすぐさは、寄せ書きの「I♡幕(アイラブ)桜本」の一言にも色濃かった。

 思いを書き残した崔の震えるような筆致。

 〈きのうはどうだった? とみんな信じて聞いてきた。ごめん、ごめん、みんなの思いはしっかり掲げたけれど、残念ながら彼らには伝えられなかった。桜本に向かって来てしまった。力不足でごめん。この横断幕を1回で終わらせると約束したのに守れなかった〉

 〈だけど千人の仲間たちが、この横断幕を支えてくれた。桜本の入り口で道に寝て、座り込んで桜本を守ってくれた。この大人をもう一度信じてほしいとお願いした。一人一人がそれぞれ私の目を真っすぐ見て、聞いてくれた。やつら許せねえ。カンちゃん、...

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