時代の正体〈254〉ヘイトスピーチ考② 街を守った市井の仲間|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈254〉ヘイトスピーチ考② 街を守った市井の仲間

桜本封鎖(2)


対峙

 差別主義者と対峙(たいじ)するその前に、にじり寄る警官隊に息を詰め、向き合った数分間。

 〈今でも信じられないあの光景。大島3丁目の交差点で桜本方面にデモを通そうとしている警察の配置を見た瞬間、私が見た光景は色を失った。「お願いです。お願いです。桜本には来させないでください。この道を絶対に通させないでください。僕は大人を信じています。お願いです。お願いです」と泣き叫ぶ息子。俺らが汚れ役やるから、俺らはこのためにいるんだと冷たい路上に寝て、身を呈して桜本を守ったカウンターの仲間。しっかり見なきゃと思ったのに、守らなきゃと思ったのに涙が止まらなかった。今度は私が守る番だと、排除する警察官に私の友だちを守ってくれと叫んだ〉
 警官隊はなおも「あなたたちは道路交通法に違反している」と警告を繰り返し、隣同士で腕を組み、排除を拒む路上の人たちを引きはがそうとしていく。

 地元住民として迷わず体を投げ出したという男性(39)は言う。

 「なぜあんなひどいデモをやらせるのか。それが権利だというのなら、抗議する権利も認めるべきだ。なぜ、こちらばかりがないがしろにされなければいけないのか」

 その行動は、法に触れることをすべきか否かという判断の以前、不均衡、不条理を前にして人はどうあるべきかという根源的な問いを投げ掛けてもいる。

 そもそも道交法違反という捉え方自体、一面的ではないのかという問いだってあり得る。日本は人種差別撤廃条約に加盟していて、2条では、締約国は個人、集団、団体による人種差別を禁止し、終了させる義務を負うと定める。義務は政府だけでなく地方自治体にもあるとしている。

 より大きなものを破っているのはどちらの側で、放っておけばより大きなものが壊される。それが分かっているのなら、とるべき行動は明らかだという、知性を勇気に換えた反射的で、しかし、思慮深い行動。

 気付けば、横たわる人の列の後ろに座り込む人々が続き、さらに背後に二重、三重の人垣ができた。その数100人超。女性がまた叫んだ。「警察はルートを変えさせろ」

 列が動きだした。一つ先の大島四ツ角交差点に差し掛かるとUターンが始まった。前回に続いて桜本への侵入を阻んだ。沿道につかの間、安堵(あんど)の空気が広がった。

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