当事者ら新たに労組 施行迫る障害者差別解消法(下)

 障害者差別解消法の施行と並行し、雇用分野では改正障害者雇用促進法が4月1日、施行される。同法は雇用分野について、不当な差別的取り扱いの禁止だけでなく、合理的配慮の提供も事業主に義務付けた。そのため、昨年末には「障害者労働組合」(京都市、末吉俊一委員長)が結成されるなど、働く障害者の取り組みも始まっている。雇用分野の課題を探る。

 昨年12月、全国の身体障害者、知的障害者、精神障害者25人が参加し、組合員、執行部すべて障害者で構成する障害者労働組合が結成された。都内で開かれた結成大会には、全国福祉保育労働組合などの労働組合や障害者団体の代表も出席し、結成を祝った。

 活動方針では、団体交渉権を活用し、孤立しがちな障害者を支援し、労働者としての権利の擁護、職場環境の改善、最低賃金の確保などに取り組むとした。これにより、労働者全体の権利の底上げに貢献したいとしている。末吉委員長は「働くことに希望を持てるようにしたい」と決意を表明した。

問われる各職場


 組合の大きな課題の一つが、改正障害者雇用促進法で規定された合理的配慮の提供義務への対応だ。

 同法は「障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすことになるときは、この限りではない」とした。

 必要な措置とは何か、過重な負担は何かなど、障害者の障害特性に応じ、各職場が問われることになる。

 厚労省が示した「合理的配慮指針」では、障害者の申し出や事業主による事情確認を受けて、障害者と事業主が話し合いをし、合理的配慮の内容を確定するとしている。具体事例としては、肢体不自由では、机の高さ調節や、スロープ、手すりの設置、視覚障害では拡大文字、音声ソフト等の活用、危険箇所の事前確認など、精神障害では、出退勤時刻・休暇・休憩に関し通院・体調への配慮、発達障害では図等を活用したマニュアル、感覚過敏の緩和などが挙げられている。

鍵は団体交渉権


 しかし、弱い立場にある障害者が申し出や話し合いの場で事業主に主張し、配慮の内容を交渉するのは困難も想定される。そこで重要な役割を担うのが、障害者に特化し、個人加盟できる労働組合だ。

 「働く障害者の弁護団」代表で、NPO法人「障害児・者人権ネットワーク」理事の清水建夫弁護士は「組合に加入していれば、企業、使用者は組合の団体交渉に応じなければならない。団体交渉権を活用してほしい」と指摘する。

 また、指針の事例について「すでに当然として行われてきた物理的・物質的対応ばかりで、現実の改善をめざすものではない。現状固定で良しと考えている。障害者権利条約の実現を阻害する」と批判。指針を超えて合理的配慮を勝ち取っていくためにも、団体交渉など組合運動の役割は大きいとしている。

課題はソフト面


 一方、いたずらに対立しては解決は難しく、冷静な対応が必要との指摘もある。障害者のための労働組合として2013年12月に発足し、これまで約500件の労働相談に応じてきたという「ソーシャルハートフルユニオン」(石崎真一委員長、東京都、組合員約110人)の久保修一書記長は「目標は障害者に定年まで働いてもらうことなので、冷静に知恵を出し合ってルールを決めていくのが望ましいのでは」と語る。

 同組合は、主に働く知的障害者の権利擁護のため、障害者の組合員のほか、保護者ら健常者が委員長、書記長など役員を務める体制で発足した。しかし、ふたを開けてみると、大手企業の障害者枠で働く精神障害者からの相談が約7割を占めた。「企業は精神障害者の雇用に積極的に取り組んでいるが、精神障害についての知識、対応のノウハウが足りない。アスペルガー症候群の人に報告書を書いてもらう際には、字数制限をするとスムーズにいったりする。合理的配慮の提供でも、医療面への配慮などソフト面が課題」とする。

 4月の同法施行に向け「企業も障害者も手探り状態。4月までは我慢するという障害者もいる。一定数の訴訟も起きるかもしれない」という。「企業別組合では少数派の障害者は対応してもらえないケースが多い。組合員が障害者をいじめている事例もある。そこで障害者に特化した労働組合が必要」とし、障害特性に応じた対応方法を企業に指摘することがユニオンの大きな役割だとしている。

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