時代の正体〈249〉改憲(下)木村草太さん

内在する不合理と危険

 現行憲法が公布され、今年で70年。安倍晋三首相は新年早々から改憲に対し、意欲的な姿勢を鮮明にしてきた。焦点となるのが「緊急事態条項」だ。憲法学者の首都大学東京准教授、木村草太さんは「政府の独裁権を認める条項。乱用の危険性も非常に高い」と警鐘を鳴らす。

 15日に行われた参議院予算委員会。改憲について問われた安倍首相は、緊急事態条項に関して「極めて重く大切な課題だ」と重視する姿勢を強調した上で、こう答弁した。

 〈大規模な災害が発生したような緊急時において国民の安全を守るため、国家そして国民自らがどのような役割を果たすべきか、それを憲法にどのように位置付けるかについては、極めて重く、大切な課題であると考えている〉
 緊急事態条項は、大災害や他国からの武力攻撃の発生など緊急時の際の総理大臣の権限を強めることが柱だ。自民党は憲法改正を目指す上で最優先に議論すべきテーマと公言している。

 「だが」と、木村さんは警戒する。同条項にはいくつもの不合理と危険性が内在する、と。

言い換えれば「独裁権条項」

 首をかしげる点は少なくない。「そもそも自民党は大災害への対応の必要性を挙げるが、では東日本大震災のとき、当時野党だった自民党が、菅直人首相に独裁権を与えるべきだと言ったでしょうか」

 さらに、想定している大災害や武力攻撃に対しては既に「災害対策基本法」や「武力攻撃事態法」がある。災害時に自衛隊による機動的な活動が難しかったり、自治体間の権限区分が複雑だったり、情報共有が滞ったりという問題は、まず法改正とその運用を見直すのが筋だ。

 自民党の憲法改正草案では、緊急事態条項を98条、99条に規定。「緊急事態」の具体的な内容は法律で定めるとしている。

 条文について木村さんは「いかなる場合に緊急事態を認定できるのか憲法草案上は非常にあいまい。にもかかわらず、宣言した後の権限は極めて強大だ。詳細は法律で定めるとしているが、緊急事態を宣言すれば、その法律も内閣が制定する『政令』で覆すことができる。結局は政令にすべてを丸投げしている。これでは刑事訴訟法といった刑事手続きを定めた法律も政令で改変できる。例えば無令状逮捕だってできてしまう」と分析する。

 国会無視を可能とし、司法権の介在をもはねつけることができる-。権力の一極集中を避け、抑制と均衡によって国を統治する根幹である三権分立を破壊しかねない規定を憲法に盛り込もうと、行政をつかさどる政府が口にする屈折。

 木村さんはこう結論付ける。「言い換えればこれは政府の『独裁権条項』だ」

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