時代の正体〈248〉改憲(上)木村草太さん|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈248〉改憲(上)木村草太さん

安倍政権の矛盾と屈折

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2016/01/24 02:00 更新:2016/07/14 09:14

「現行憲法を侮辱」

 権力に対して謙虚でいられず、より強大化するかのような政権に、木村さんは深い思慮や政治思想を見いだせないでいる。

 「自民党の改憲草案に関わった議員に危険性を指摘しても『特に意味はない』と答える。やりたい政策はなく、些細(ささい)な文言でもいいから変えたいという思いしかない」

 木村さんがそこに見いだしたのは「つまり日本国憲法を侮辱したい。おとしめたいという気持ち」だ。

 背景にあるのはいわゆる「押し付け憲法論」。明治憲法の改正に消極的だった日本政府に対し、連合国軍総司令部(GHQ)の民政局作成のマッカーサー草案を示し、それを下敷きに「帝国憲法改正案」ができた経過をもって「押しつけられた」とする。

 ところが実際は、同改正案は帝国議会で十分に審議され、一部修正も加えられて可決成立し、日本国憲法となっている。改憲の本質的根拠としては極めて希薄である。木村さんはむしろ政策的必要性や国民の側から改憲論議が始まるべきだ、と考える。

攻撃される「民主主義のシステム」

 若き憲法学者の目に、いまの政権は自己目的化した「改憲」をターゲットに、意図的に視野を狭め猛進していると映る。衆院ではすでに自民公明だけで発議条件の3分の2の議席を持つ。今夏の参院選で改憲派が3分の2を握れば「非常に不合理な改憲」提案が国民投票にかけられる。

 憲法改正が現実に差し迫っているかのようだが、木村さんの見立ては違う。

 集団的自衛権の行使を容認する閣議決定が行われた2014年7月以降や、それを踏まえた安全保障関連法が閣議決定された15年5月以降の世論の動きだ。

 「時間が経過し情報が共有され、議論が重ねられると、いずれも反対の方が多くなっていった。相当異常な文言になっている安保法制が成立してしまったのは、改正手続きが国会だけでなしうる法律だったからだ」と捉える。

 それゆえ「改憲を食い止める方法は日本社会が持っている民主主義のシステム、つまり表現の自由や報道の自由がきちんと機能するか、というところにかかっている。そして政権はそこを攻撃してくる」

 圧力は既に、着々と始まっている。15年4月には自民党の情報通信戦略調査会が、テレビ朝日とNHKの局幹部を呼び出した。衆院選を前にした14年末には、NHKと在京民放テレビ局に対し、選挙報道の公平中立などを求める要望書を渡した。

 そうした攻撃にあらがうのか、屈するのか。「そこが問われている」

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