時代の正体〈246〉ヘイトスピーチ考(上) 「差別の自由」いつまで

記者会見(上)

 差別から自分たちの街を守ろうと市民が立ち上がった。在日コリアンへのヘイトスピーチ(差別扇動表現)が繰り返されている川崎市で「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が結成された。「ヘイトスピーチは共に生きるまちづくりへの重大な挑戦」。設立記者会見で語られたのは、差別を放置し、許容し続ける現状への問い掛けでもあった。

 市民ネットワークの呼び掛け団体と当事者である在日コリアンが並んだ記者会見の席上、重大かつ深刻な警告は発せられた。

 「小さいものなら、テロは各地で起きている」

 差別デモの現場に駆け付け、抗議の意思を示す「カウンター」と呼ばれる人たちのグループ「クラック川崎」の前野公彦さん(48)は、ためらいなくそう言った。

 差別主義者の列に対峙(たいじ)し、その息づかいに触れてきたその人の危機感の表明。差別をあおるヘイトスピーチは放っておけば肉体的危害に及ぶヘイトクライム(憎悪犯罪)へとエスカレートする。歴史を振り返れば、その行き着く先はナチスによるホロコーストであり、関東大震災における朝鮮人虐殺であった。

 いま、その途上-。

 公道で「朝鮮人をたたき出せ」と叫ぶ差別デモは主にJR川崎駅前の繁華街で行われ、2013年5月を皮切りに昨年11月で11回を数える。参加者の一人がデモ終了後、川崎駅ホームで通行人を模造刀で切り付ける事件が起きたのは4回目となった14年2月。周囲で配られていた抗議のチラシを手にしていたことからカウンターだと勘違いしての犯行だった。

 以後、県警が参加者の持ち物検査を実施するという異様な光景が続く。それでもデモは許可され続け、昨年11月8日には在日コリアン集住地域である川崎区桜本で計画されるに至った。

 それまでは駅前の繁華街を練り歩いていたものが日常の暮らしの中へ押し入ろうとしていた。地域の人々やカウンターによる大規模な抗議の結果、直前にルートは変更されたものの、エスカレートは明らかだった。

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