木造帆船「やまゆり」再び五輪へ

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2016/01/02 02:00 更新:2016/01/02 02:00
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 1964年東京五輪のヨット競技は藤沢・江の島で行われた。その際、県の2本マスト木造帆船が来賓を乗せた。それから半世紀。今も「湘南の貴婦人」と呼ばれる木造帆船が市民の手で保存され、相模湾を優雅に走っている。そして2020年、再び江の島に五輪セーリング競技がやってくる。木造帆船の保存活動をするNPO法人は「五輪2大会を同じ場所で経験するヨットは希有(けう)だろう。なんとか次の五輪まで元気で走らせたい」と、さらに保存に力を入れている。

 全長13・3メートル、幅3・94メートル、総トン数19・06トンの「やまゆり」は1962年の建造。64年の東京五輪を見据え、県が横浜の岡本造船所に発注した。

 当時の神奈川新聞の記事(62年3月22日付)は、やまゆりの進水式の様子を「小雨の降る海面に進水、白いスマートな姿を浮かべた。(中略)ヨット型で帆を張っても走れるという全国警察でははじめてのご自慢のもの」と伝えている。

 五輪時は国内外の来賓用クルーザーとして、その後は県警警備艇として使用。70年に江の島ヨットクラブ(EYC)の所有となり、維持・管理されてきた。

腐食との戦い

 しかし老朽化に伴い、廃船にする話が浮上。「貴重な大型木造帆船を保存しよう」と、EYC会員の有志らが保存活動団体「やまゆり倶楽部」を93年に設立。2013年にはNPO法人「帆船やまゆり保存会」に衣替えして、現在まで海で動かしながら、船体保持に努めている。

 既に齢(よわい)54の老船。この規模で現存する木造帆船としては最も古いものといわれ、保存するには苦労が絶えない。同保存会理事長の中村満夫さん(74)は「ひびがあれば、水が入って腐ってくる。それを見つけて、そこだけ船体から切り取って、新たな木材を接ぎ合わせる。腐るのと直すのとの追いかけっこ。そんな戦いをしている」と苦笑いする。

 現在のヨットではアルミが主流となっているマストも、やまゆりではいまだ木製。定期的にやすりをかけ、ニスを何度も塗る作業を、保存会の会員自らの手で定期的に行っている。

木の温かみを

 維持・管理にかかる費用は年間約400万円。会員の年会費や寄付、チャーターやクルージングでの利用で賄う。

 より広く知ってもらおうとセーリング体験会も数多く開く。「軟らかくて、温かみがある。木造船の良さを知ってほしい。一度乗れば『また必ず来ます』という声が多い」と中村さん。会員番号は500番を超えた。

 今後、年間で100人程度集め、20年東京五輪までに会員数千人を目指している。「20年もぜひこのやまゆりを江の島で走らせたい。古い船でも手を尽くせば、けなげに走る」。江の島での五輪開催が保存活動の追い風になることを期待しながら、中村さんは船の手入れに余念がない。

 入会など問い合わせは、同会事務局電話0466(41)0307。ホームページはhttp://yamayuri-club.jp/

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