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焦土癒やしたハマのジャズ

瀬川さんと柴田さんの連続講義をまとめた「日本のジャズは横浜から始まった」

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 ジャズ評論家の瀬川昌久さん(91)と、音楽プロデューサーの柴田浩一さん(69)が開いた連続講義をまとめた書籍「日本のジャズは横浜から始まった」が発売された。“戦後ジャズの出発点”とされる瀬川さんのライブから70年。11月下旬には日本郵船氷川丸で伝説のライブが再現されるなど、ジャズと戦争と平和を考えさせるイベントが続く。

 同書は、横浜市中区野毛町の「ジャズ喫茶ちぐさ」で、2月から4月にかけて5回にわたり、ジャズの歴史と進化を10時間余り語った連続講義をまとめたもの。日本における新しいジャズ文化の創造に貢献した、多くのミュージシャンの貴重な記録になっている。講義を主催した一般社団法人「ジャズ喫茶ちぐさ・吉田衛記念館」が発行した。

 同書でも紹介されているのが、1945年12月の氷川丸ライブだ。海軍主計少尉で復員担当だった瀬川さんが催した。

 終戦後、氷川丸はパプアニューギニアのラバウルから復員する日本兵を運んでいた。瀬川さんは復員兵の面倒を見ていた少年兵ら300人を慰労しようと、初プロデュースとなるジャズイベントを停泊中の氷川丸で開催。楽団南十字星や歌手・永岡志津子さんが出演し、大好評を博した。

 今年は氷川丸建造85年でもあり、11月29日に氷川丸で再現ライブが実現した。新メンバーで再結成した楽団南十字星が「センチメンタル・ジャーニー」などの当時の流行曲を演奏し、会場は熱気にあふれた。氷川丸の金谷範夫船長も戦争の波にもまれた同船の歴史を解説した。

 会場には、少年兵だった男性(88)も元気な姿を見せ、再会を果たした。「感無量だった。息絶えた復員兵を船上で火葬に付したことや、監視していた米軍憲兵が持っていた携帯ラジオからジャズが流れた思い出がよみがえった」と振り返る。

 瀬川さんは楽団南十字星への出演交渉の裏話などを披露。戦後70年を迎え、「戦争があらゆる世界を変えてしまう。無差別に人を殺す事件が起きる今こそ、世界全体で一緒に暮らし生きていくことを考えることが必要だ」と訴える。

 本は四六判112ページで、定価千円(税別)。再現ライブの様子は、動画投稿サイトYouTube(ユーチューブ)で公開している。問い合わせは、ちぐさ電話045(315)2006。

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