殺意認定が焦点 厚木・男児放置死きょう判決|カナロコ|神奈川新聞ニュース

殺意認定が焦点 厚木・男児放置死きょう判決

 厚木市のアパートで昨年5月、死後7年以上たった男児=当時(5)=の遺体が見つかった事件で、殺人などの罪に問われた父親(37)の裁判員裁判の判決が22日、横浜地裁(伊名波宏仁裁判長)で言い渡される。殺人罪の成立を認めるかが最大の焦点。審理に参加した裁判員の「市民感覚」がどのように反映されるかも注目される。

 公判で被告は殺人罪を否認。検察側は、男児が死亡する危険性を認識しながら適切な対応を取らずにアパートに放置したとし、「未必の故意」による殺人罪の成立を主張。懲役20年を求刑した。弁護側は被告に殺意はなかったとして、保護責任者遺棄致死罪にとどまると反論している。

 死亡に至る経緯をどう評価するかも、量刑に影響を与えそうだ。検察側は、男児を長期にわたってアパート内に閉じ込めたとし、「あまりに残酷」と指弾する。弁護側は、男児を一時保護した児童相談所が、その後の家庭訪問をしていなかったことを踏まえ「行政機関の対応の不備などがあり、被告に全責任を負わせるのは酷」と情状酌量を求めている。


■分かれる判断
 育児放棄に殺人罪が成立するかは、殺意の有無で判断が分かれている。

 大阪市西区で2010年、当時3歳と1歳の姉弟が餓死し、母親が殺人罪に問われた。殺意の有無が争われ、大阪地裁は12年、母親は姉弟が衰弱していることを認識しながらわずかな飲食物しかない状態で外出したとし、「危険な行為と認識して放置したことは殺意があったと判断できる」と指摘。殺人罪で懲役30年=上訴後確定=を言い渡した。

 一方、奈良県桜井市で10年、飢餓による衰弱で当時5歳の男児が死亡した事件。警察は両親を殺人容疑も視野に捜査したが、奈良地検は保護責任者遺棄致死罪で起訴した。死亡直前に母親が児童相談所に連絡していたことから、死ぬことを容認していたとまでは言えないと判断したとみられる。両親は11年、同罪でともに懲役9年6月の判決を受けた。


■市民感覚は
 12回にわたった公判では、男児の死亡に関わる直接の経緯のほかに、裁判員が被告の育児経験や養育状況を確認する場面も多くみられた。市民感覚は判決にどう反映されるか。

 大阪市の事件では、大阪地裁は「亡くなった子どものような被害者が二度と出ることのないよう、行政を含む社会全般が子育てに苦しむ親に理解と関心を示し、協力していくことを願う」などとする一文を判決文に盛り込んだ。

 NPO法人「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」(伊勢原市)の山田不二子理事長は、「親が自らSOSを出さなくても、社会として虐待に早く気づかなければいけなかった事件。気づかなかった社会に対しても判決で苦言を呈したり、メッセージを出したりしてほしい」と話す。

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