レベル運用にも課題 箱根山、噴火1週間|カナロコ|神奈川新聞ニュース

レベル運用にも課題 箱根山、噴火1週間

大涌谷の調査中に車に積もった火山灰を採取する東海大の大場武教授(右)。気象庁が噴火を公表したのは、この約2時間後だった=6月30日午前10時35分ごろ

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 箱根山(箱根町)の大涌谷で6月末に起きたごく小規模な噴火では、地下約10キロにたまっているマグマは噴出していない。浅い場所の熱水が起源となり、地表付近の岩石の破片が飛散したとみられている。戦後最悪の火山災害となった昨年9月の御嶽山と同じ水蒸気噴火だが、今回飛散した火山灰の量は御嶽山のおおむね数千分の1~1万分の1程度とされ、規模ははるかに小さい。

 火山性地震と噴気が活発だった5月中に噴火へ移行する確率を4%と見積もった静岡大の小山真人教授は「地層に痕跡が残りにくい今回の噴火は確率に含まれていない」と説明。今後、活動がどう推移するか見通せず慎重な警戒が必要なだけに、噴火をめぐる気象庁の判断や対応に疑問を投げ掛ける。「噴火が起きたのだから、噴気孔でなく火口と呼ぶべきだ」

 噴火の日時についても同庁は「6月29日夜から30日の間」との見解を変えていないが、小山教授は29日朝に観測された火山性微動に着目。「微動に伴って火口が開いたと考えるのが自然。その時点か直後に噴火が起きたのではないか」。火山性微動は、時に有感となる火山性地震と異なり、マグマや熱水の移動を意味するとされ、箱根山での観測は初めてだった。

 県温泉地学研究所も「灰のようなものが車に付着している」といった情報が相次いで寄せられた29日昼ごろには噴火が始まったとの見方を示す。

 だが、気象庁は29日夜に「噴火ではない」と否定。一転して噴火を認め、警戒レベルを3(入山規制)に引き上げたのは、30日昼だった。小山教授は「箱根では初のケースだったため、多少躊躇(ちゅうちょ)するのはやむを得ないとしても、29日に噴火を認定しレベルを引き上げるべきだった。防災は先手が原則だ」と指摘する。

 その気象庁も、大型連休中の5月6日早朝に警戒レベルを2(火口周辺規制)に引き上げた際は「先手の対応」が評価されてもいた。5日夜に起きたやや規模の大きい地震の震源が深い場所だったことを重くみて、「火山活動のステージが変わった」と踏み込んだ。

 この判断について気象庁の元幹部は「箱根山であのような地震は珍しくない。少しでも早くレベルを引き上げるための材料にしたのではないか」と内情を読む。「大涌谷が観光客でにぎわっているときに噴火が起きる最悪の事態を回避しようとしたのだろう。御嶽山の反省を生かす意図が強くにじんでいた」

 1979、91、2007年と噴火を繰り返してきた御嶽山もかつては「死火山」と考えられていた。

 一方、地層の痕跡から直近の噴火が12~13世紀とされる箱根山では、現在のような観測体制が整ってからは噴火がない。それでも1920~70年代には大涌谷で噴気異常が何度も発生し、33年には蒸気の噴出で死者も出ている。温地研の萬年一剛主任研究員は「今回のようなごく小規模な噴火はこれまでに起きていた可能性がある」とみる。

 さらに時代をさかのぼれば噴火の形態は多様で、6万6千年前には横浜や三浦半島に火砕流の痕跡を残す大規模噴火を起こしていた。箱根山の噴火史に詳しい県立生命の星・地球博物館の笠間友博主任研究員は強調する。「時代とともに徐々に噴火規模が小さくなっているように映るが、自然現象のスケールには幅がある。次がどうなるかは読み切れない」

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