秦基博「血にじむ言葉」

旬漢〈6〉

シンガー・ソングライターの秦基博。3日に18枚目のシングル「水彩の月」を発売した

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 「フィルムを切ったら、血が出るのではないか」。河瀬直美監督(46)はメガホンを取った最新映画「あん」(原作:ドリアン助川)を指し、言った。

 舞台はどら焼き屋。店主の千太郎に永瀬正敏、ハンセン病患者であることをふせ、店で働く老女・徳江に樹木希林。河瀬監督はカメラが回っていないところでも役になることを求めた。「スタート」の声はもちろん、終わりを示す「カット!」の声もかからない。いつ撮られているのか分からない永瀬らは、演じるのではなく、その人になりきった。

 坂のふもとにある小さな店。簡素な前掛けを腰に、頭に手ぬぐいを巻いて、千太郎は毎日焼き場に立つ。鉄板に落とした種を、鉄べらでひっくり返し、焼き仕上がった皮に用意しておいたあんをはさむ。その行程をひたすら繰り返していく。板に書いた「どら焼き 1個120円」の文字を見た地元民が、映画撮影とは知らずに「新しいどら焼き屋ができた」と列を作ったこともあった。

 差別に苦しみ生きたハンセン病患者の苦悩を描いた同作。主題歌は、河瀬監督が以前から親交があったシンガー・ソングライターの秦基博(34)に依頼した。仮編集段階の試写に出向いた秦は、「生きている意味について問いかけられているように感じた」と言い、生まれたのが発売中の新シングル「水彩の月」だ。

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